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「さとやま」ってなに?

私たちが再生を目指す「里山」についてご説明いたします。

かっちゃんのつぶやき 里山のある街・北鎌倉で生まれ育ったかっちゃんこと川上克己さんが里山への熱き思いをつづります。

【vol.2】ヨウカゾウ

update:

「山から小僧がとんできた~ なんとって飛んできた~ 寒いとって飛んできた~ 寒きゃ~暖たれ~ 熱きゃ~ひっつあれ~ ひっつあり虫がたかるぞ~・・・・」

寒さが身に染みる季節になると、幼い頃、暖かい竈の火の前で、父ちゃんが教えてくれた歌をふと思い出す。この歌は子どもの頃は怖かった。
私の住む台の集落に「ヨウカゾウ」にまつわる怖い話が伝えられていたのだ。

台峰の山畑1955年
台峰の山畑1955年

「ヨウカゾウ」とは1月8日、台峰の山神様の祭りの日で、この日は集落の人は絶対に山に立ち入ってはいけない日なのだ。言い伝えをやぶると,祟りや罰が当たると言われ、この日は山仕事や山の畑に集落の人は行かなかった。
父ちゃんの若い頃、近所の変わり者が「馬鹿な迷信が守れるか」と言って山仕事に出かけてしまった。案の定、仕事中に倒れ意識朦朧としている時、白い着物に白い髭の老人が、頭の上を行ったり来たりしたそうだ。
父ちゃんは「これが山神様だ」と。

また、屑掻き(たきぎ取り)に出かけてしまったおばさんが、自分の意志に反して、家とは反対方向の人里離れた○○神社に引き込まれてしまった。
意識がうすれ、家に帰れずに一晩その社の中で過ごすことになってしまった。
夜中に天井裏でゴロゴロ樽を転がすような音が響き、恐怖に震えていた。
夜が明けやっと解放されて、おばさんは家に帰ることが出来たそうだ。

神様にはお使がいる、稲荷様はキツネ、弁天様は蛇、と、言うように山神様は三つ目小僧の妖怪がお使いだと言う。
ヨウカゾウのこの日は、お使いの三つ目小僧が山からに下りてきて、村人が山に入っていないか確かめに来ると言われていた。
村の人は、三つ目小僧が家の中に入り込まないようにオマジナイをする。
家の入口に屑掻きに使う籠を置いておく、三つ目小僧は自分より目の多い籠に恐れ入り、その家には入れないのだ。我が家は、山からは最初の一軒目だ。
家でもしっかりと家の入口に屑掻きの籠を置いた。
「山から小僧がとんできた・・・」幼い頃、この歌は三つ目小僧の歌だと思っていたのだ。

とうの昔に、死んじまった父ちゃんの言いつけを守り、今でも「ヨウカゾウ」の1月8日は厄災を畏れ、山仕事はお休みです。

川上克己(かわかみ・かつみ)
昭和13年生まれ。台峯のふもとの台に生まれ台に暮らす。15歳から働き始め、貯めたお金でカメラを買う。以来、台峯の暮らしと自然を撮り続け、台峯保全に大きな貢献をした。定年後は、地元小学校や鎌倉市内外の市民団体などの要請で台峯を案内する一方、里山インストラクターとして台峯、六国見山森林公園、明月荘の手入れに積極的に参加、多忙な日々を送っている。

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